海外医療通信2024年11月号 東京医科大学病院渡航者医療センター
海外感染症流行情報 2024年11月
(1) 全世界:COVID-19の流行状況
欧米諸国では11月に入ってもCOVID-19の患者数増加は見られていません(米国CDC 24-11-23、ヨーロッパCDC 24-11-22)。一方、日本では11月中旬から全国的に患者数が増加傾向にあります(厚生労働省 24-11-22)。ウイルスの種類としてはオミクロン株JN.1系統のXEC型が、世界的に増えています(WHO corona 24-11-6)。今後、北半球ではXEC型が中心になり、冬の流行が起こるものと予想されます。
(2)全世界:エムポックスの流行状況
アフリカでのエムポックスの流行状況は最近1ヶ月で大きな変化がみられておらず、重症化しやすい1型の患者は、コンゴ民主共和国、ブルンジ、ルワンダ、ウガンダなどで発生しています(WHO Mpox 24-11-21)。アフリカ以外では、この1ヶ月にインド、英国、米国で1型の患者が確認されており、英国では4人の集団感染が発生しました(英国Health Security Agency 24-11-4)。
(3)アジア:デング熱の流行状況
東南アジアでは11月になり、デング熱の流行が収束に向かっています(WHO西太平洋 24-11-14)。各国ともに、患者数は例年並みか少ない数でした。一方、南アジアでは11月に入っても患者発生が続いており、インド、パキスタンなどでは例年よりも患者数が増えています(WHO南東アジア24-11-13、米国CDC 24-11-15)。
(4)アジア:麻疹の流行状況
アジアではここ数年、各地で麻疹の流行が発生しています。米国CDCが最近発表した高リスク国には、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、スリランカ、パキスタンなど東南アジアや南アジア諸国とともに、中東のサウジアラビアやトルコも含まれています(米国CDC 24-11-21)。こうした国々に滞在する場合、麻疹罹患歴が無く、ワクチンを2回接種していない人は、追加接種を受けるようにしましょう。
(5)アフリカ:エチオピアでのマラリア流行
エチオピアでは今年になりマラリア患者が730万人発生し、1000人以上が死亡しました(WHO 24-10-31)。過去7年で最多の患者数になります。重症化する熱帯熱マラリアが大多数で、北部のアムハラ地域や南部のオロミア地域で多くなっています。エチオピアは日本からの直行便もあるため、近年観光客が増えており、滞在中は蚊の対策などマラリア予防を実施することが必要です。
(6)北米::米国、カナダでH5N1型患者発生が続く
米国では今年、鳥インフルエンザH5N1型ウイルスの患者が発生しており、11月下旬までに55人となりました(米国CDC 24-11-22)。この1ヶ月は、カリフォルニア州を中心に20人以上発生しています。患者の大多数はウシや家禽の牧場労働者で、症状は結膜炎や上気道炎など軽度です。一方、カナダのブリティッシュ・コロンビア州では、11月初旬に10歳代のH5N1型患者が発生し、重症になっています(カナダ保健省 24-11-13)。この患者はウシや家禽との発病前接触が否定されており、感染源が不明とのことです。
・日本国内での輸入感染症の発生状況(2024年10月14日〜11月10日)
最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査2024年 (niid.go.jp) を参考に作成しました。
(1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢2人、腸管出血性大腸菌感染症10人、腸チフス3人、パラチフス1人、E型肝炎1人、ジアルジア症1人が発生しています。腸管出血性大腸菌感染症は、韓国での感染が前月の51人から6人に大幅減少しました。
(2)昆虫が媒介する感染症:デング熱は13人発生し、前月(26人)より減少しました。感染国はネパール4人、インド3人、バングラデッシュ2人と南アジアが多くなっています。今年のデング熱の累積患者数は207人で、昨年同期の144人に比べ増加しています。チクングニア熱の患者は2人で、感染国はインドとフィリピンでした。マラリアの患者はこの期間中は発生しませんでした。
(3)その他の感染症:麻疹の患者が1人発生し、ベトナムでの感染でした。
・渡航者医療センターからのお知らせ
東京医科大学病院・渡航者医療センターは、2024年9月から東京医科大学病院敷地内にある駐車場棟1階に移転しました。https://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/tokou/