海外医療通信2026年1月号 東京医科大学病院 渡航者医療センター        

海外感染症流行情報 2026年1月 

(1) 全世界: インフルエンザとCOVID-19の流行状況

今冬は北半球全体でインフルエンザA(H3N2)型の流行が発生していますが、1月中旬になり収束に向かっています(WHO global influenza program 26-1-21)。この流行は南半球にも波及しており、夏の最中にあるオーストラリア、ニュージーランドでも患者数の増加がみられています(WHO西太平洋 26-1-14)。

COVID-19については米国で患者数がやや増加しているものの、日本や欧州など北半球全体で1月は収束状態にあります(WHO COVID-19 dashboard 26-1-22、厚労省 26-1-23)。検出されるウイルスの種類はXFG型が多くなっています。

(2) 全世界: チクングニア熱の流行状況

チクングニア熱は蚊媒介感染症で、最近、世界的に患者数が増加しています。25年は12月上旬までに、全世界で50万人のチクングニア熱の患者が発生しました(WHO rapid risk assessment 25-12-29)。このうち30万人は中南米で発生しており、ブラジルが24万人と多くなっています(英国National Travel Health Network Center 25-12-29)。アジアでは、インドで5000人以上、中国で2万人の発生がありました。また、ヨーロッパでもフランスで約700人、イタリアで約300人の国内感染例が報告されています(ヨーロッパCDC 26-1-5)。日本では25年の輸入患者数が21人で、24年の10人から2倍に増加しました(国立健康危機管理研究機構 26-1-6)。

(3) アジア:デング熱の流行状況

東南アジアや南アジアでは1月に入りデング熱の患者発生が少なくなっていますが、マレーシアやインドネシアなどの熱帯では媒介蚊の多い季節が続くため注意が必要です。(WHO西太平洋 26-1-8、WHO南東アジア 26-1-14)。なお、25年はベトナムで南部を中心に18万人のデング熱患者が発生し、過去20年で最多になりました。(ProMED 26-1-7)。

(4) アジア:インドでニパウイルス感染症患者が発生

インドの西ベンガル州(州都コルカタ)で、ニパウイルス感染症の患者が1月中旬までに5名発生しました(WHO南東アジア 26-1-14、ProMED 26-1-19)。ニパウイルスはコウモリが保有するウイルスで、コウモリとの接触やその体液で汚染された食物を食べて感染し、脳炎など重篤な症状を起こします。インドでは南部のケララ州で散発していましたが、西ベンガル州での患者発生は2007年以来になります。

(5) アフリカ:モザンビークでのコレラ流行

アフリカ南部のモザンビークで今年になりコレラの流行が発生しています(英国National Travel Health Network Center 26-1-13、20)。患者数は北部を中心に5000人以上に達し、68人が死亡しました。隣国のマラウイでも南部で患者の発生が報告されています。アフリカではモザンビーク以外でも、コンゴ民主共和国、南スーダン、アンゴラなどでコレラの流行が発生しており、滞在中は飲食物に注意するとともに、ワクチン接種も検討ください(ヨーロッパCDC 26-1-9)。

(6) 北米:米国で今年も麻疹患者が増加

米国では25年に2255人の麻疹患者が発生し、3人が死亡しました(米国CDC 26-1-23)。これは1992年以来の最多数です。このうち6割は19歳以下で、93%はワクチン未接種者でした。今年も1月中旬までに南カロライナ州などで416人の患者が発生しており、昨年を上回るペースになっています。

日本国内での輸入感染症の発生状況(25年12月8日〜26年1月11日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立健康危機管理研究機構・感染症情報提供サイトの感染症発生動向調査 感染症発生動向調査週報ダウンロード2025年|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト 感染症発生動向調査週報ダウンロード2026年|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトを参考に作成しました。

(1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢3人、腸管出血性大腸菌感染症12人、腸チフス1人、A型肝炎1人、E型肝炎3人、アメーバ赤痢1人、ジアルジア症1人が報告されています。

(2)節足動物が媒介する感染症:デング熱は9人報告され、前月(10人)と変化ありませんでした。感染国の上位はフィリピンの3人でした。マラリアとチクングニア熱はこの期間に報告がありませんでした。なお、24年と25年の累積患者数を比較すると、デング熱は24年232人、25年164人で減少、マラリアは24年45人、25年22人で半数に減少、チクングニア熱は24年10人、25年21人で2倍に増加しています。

(3)その他の感染症:麻疹の輸入例が2人報告され、感染国はベトナムとインドネシアでした。

渡航者医療センターからのお知らせ

新年あけましておめでとうございます。

日ごろから渡航者医療センターの活動にご理解とご協力を賜り、心より御礼申し上げます。海外で活躍される皆さま、そして海外渡航者の健康管理に携わる皆さまにとって、本年が安全で実り多い一年となるよう、スタッフ一同、引き続きサポートに努めてまいります。世界の感染症動向は日々変化していますが、正確な情報提供と適切な医療支援を通じて、皆さまが安心して海外での生活・業務に臨めるよう、より一層取り組んでまいります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。