海外医療通信2026年5月号 東京医科大学病院 渡航者医療センター
海外感染症流行情報 2026年5月
5月時点でCOVID-19の流行は世界的に収束しています(WHO COVID-19 dashboard 26-5-3)。ただし、シンガポールでは5月上旬になり患者数が増加傾向にあります(WHO西太平洋 26-5-21)。ウイルスの種類は、BA.3.2型がヨーロッパを中心に多くなっています(WHO COVID-19 dashboard 26-5-3)なお、WHOは今年のワクチンに用いる推奨株を発表し、昨年と同様にJN.1系統のLP.8.1型としました(WHO 26-5-16)。
(2) 全世界: インフルエンザの流行状況
南半球は冬を迎えつつあり、アルゼンチン、パラグアイ、南アフリカなどでインフルエンザの患者数が増加しています(WHO Influenza 26-5-20)。南アジアのバングラデッシュでも、4月から5月にかけてインフルエンザの流行が発生しており、A(H3)型が多く検出されています(WHO南東アジア 26-5-19)。
(3) アジア:アジア各地でのデング熱流行状況
東南アジアでは5月時点でデング熱患者数の大きな増加はありませんが、ベトナムで昨年より患者数が多くなっています(WHO西太平洋 26-5-14)。南アジアではスリランカで患者数の増加が始まっています(WHO南東アジア 26-5-19)。アジア各地はこれから雨期を迎えるため、患者数の増加が予想されます。なお、南太平洋のニューカレドニアやサモアで、デング熱の患者数が例年より多く報告されています(WHO西太平洋 26-5-14)。
(4) アフリカ:コンゴ民主共和国でのエボラ出血熱の流行
コンゴ民主共和国の北東部で4月中旬からエボラ出血熱の流行が発生しており、WHOは5月16日に「公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。5月21日までの患者数(疑いを含む)は750人近くにのぼっており、176人が死亡しました(WHO 26-5-21)。隣国のウガンダでも患者が2人確認されています。ウイルスの種類は比較的稀なブンディブギョ型で、ワクチンや治療薬は未開発です。今回は流行が確認されるまでに時間を要したことや、流行地域の治安が不安定であることから、制圧までには時間を要するとみられています。
(5) 北米:カナダでA型肝炎の患者数が増加
カナダ中部のマニトバ州で25年4月からA型肝炎の患者数が増加し、今年5月までに600人以上にのぼっています(ボストン大学BEACON 26-5-12)。患者は同州北部に住む先住民が多いとのことです。
(6) 南米:クルーズ船でのハンタウイルスの集団感染
アルゼンチン南部のフエゴ島を出港した大西洋周遊のクルーズ船内で、ハンタウイルスの集団感染が発生しました(WHO 26-5-13)。最初の患者は4月6日に発症し、その後、船内でヒトからヒトへの感染が起きたとみられています。5月23日までに患者数(疑いを含む)は11人で、このうち3人が死亡しました(ヨーロッパCDC 26-5-23)。ハンタウイルスはネズミなどのげっ歯類が保有しており、アメリカ大陸で流行しているウイルスは肺炎を起こします。通常はげっ歯類から感染しますが、今回集団感染を起こしたアンデス株は、稀にヒトからヒトに感染を起こすことが知られています。現在も乗船者などの健康監視が続けられています。
・日本国内での輸入感染症の発生状況(26年4月13日〜26年5月10日)
最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立健康危機管理研究機構・感染症情報提供サイトの感染症発生動向調査 感染症発生動向調査週報ダウンロード2026年|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトを参考に作成しました。
(1) 経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢3人、腸管出血性大腸菌感染症9人、腸チフス3人、A型肝炎4人が報告されています。A型肝炎は4人全員がミャンマーでの感染でした。
(2) 節足動物が媒介する感染症:デング熱は2人報告され、前月(6人)から減少しました。感染国はインドとマレーシアでした。マラリアは3人で、インドネシア、パプアニューギニア、タンザニアでの感染でした。
(3) その他の感染症:麻疹の輸入例は9人で、前月(15人)よりやや減少しました。感染国はインドネシア、ベトナム、台湾が各2人と多くなっています。
・渡航者医療センターからのお知らせ
・日本渡航医学会の産業保健委員会から、「海外赴任者 帯同家族支援ガイド」が学会ホームページ上に公開されています。海外赴任者帯同家族支援ガイド(初版追記済) 帯同家族に対する派遣元の健康支援の考え方や具体的な対策を提示した資料ですので、是非ご覧ください。


