海外医療通信 2026年6月号 東京医科大学病院 渡航者医療センター
海外感染症流行情報 2026年6月
(1) 全世界: インフルエンザとCOVID-19の流行状況
南半球の温帯は冬に入っており、アルゼンチン、チリ、南アフリカなどでインフルエンザの患者数が増加しています(WHO Influenza 26-6-17)。アジアでもシンガポール、インド、スリランカで、この1ヶ月、患者数の増加がみられます(WHO西太平洋 26-6-17、WHO南東アジア 26-6-17)。
COVID-19については、6月時点で世界的に大きな流行はみられていませんが、シンガポールやフィリピンで患者数がやや増えています(WHO西太平洋 26-6-17)。ここ数年、北半球の温帯ではCOVID-19の夏の流行が発生しており、今後も患者数の変化について監視が必要です。なお、現時点で特に増えている変異株はありません(WHO COVID-19 dashboard 26-5-10)。
(2)アジア:アジアでのデング熱流行状況
アジア各地で雨季が始まり、蚊に媒介されるデング熱の患者数が増加しています。今年はマレーシア、ベトナム、スリランカ、モルジブなどで、例年より患者数が多く、とくにスリランカでは4万人以上になっています(WHO西太平洋 26-6-11、WHO南東アジア 26-6-17)。アジアではこれから本格的な雨季になるため、デング熱の流行地域では蚊に刺されない対策を十分に行う必要があります。
(3)アジア:南アジアでの麻疹流行
今年は南アジアで麻疹患者が急増しています。バングラデッシュでは3月から6月までに、小児を中心に8万人を超える患者(疑いを含む)が発生し、500人以上が死亡しました(WHO南東アジア 26-6-17)。インドやパキスタンでも今年は2万人の患者が報告されています(WHO Measle and Rubella Global Situation Update 26-6)。日本からの渡航者で、過去に麻疹の感染歴がなく、ワクチンを2回接種していない人は、渡航前にワクチンの追加接種を受けておくことを推奨します。
(4)アフリカ:コンゴ民主共和国でのエボラ出血熱の流行
コンゴ民主共和国の北東部で発生しているエボラ出血熱の流行は6月も続いています。6月下旬までの患者数は1000人を超え、245人が死亡しました(英国National Travel Health Network Center 26-6-22)。隣国のウガンダでも20人の患者が確認されています。今回は流行が確認されるまでに時間を要したことや、流行地域の治安が不安定であることなどにより、制圧が遅れている模様です。
(5)北米:W杯北中米大会で注意する感染症
6月から7月にかけて、米国、カナダ、メキシコの16都市でW杯北中米大会が開催されています。こうした世界的なスポーツ大会では、試合会場などで感染症の流行が発生するリスクがあるため、現地で観戦する人は注意が必要です(厚生労働省検疫所 26-6-12)。今年は米国、カナダ、メキシコで麻疹の患者数が増えており、このイベントを契機にさらに拡大する可能性があります。
(6)南米:黄熱の患者数が増加
ブラジルでは今年に入り黄熱の患者が11人報告され、6人が死亡しました(英国National Travel Health Network Center 26-6-9)。このうち9人はサンパウロ州での発生です。コロンビアでも今年前半で52人の患者が報告され、26人が死亡しました(ボストン大学BEACON 26-6-19)。患者発生は同国中西部のトリマで多くなっています。黄熱流行国に滞在する渡航者には、黄熱ワクチンの接種を強く推奨します。
・日本国内での輸入感染症の発生状況(26年5月11日〜26年6月7日)
最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立健康危機管理研究機構・感染症情報提供サイトの感染症発生動向調査 感染症発生動向調査週報ダウンロード2026年|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトを参考に作成しました。
(1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢1人、腸管出血性大腸菌感染症8人、腸チフス5人、パラチフス1人、A型肝炎4人、E型肝炎4人、赤痢アメーバ7人、ジアルジア1人が報告されています。腸チフスは5人全員が南アジア(インド、バングラデッシュ、パキスタン)での感染でした。
(2)節足動物が媒介する感染症:デング熱は5人報告され、感染国はインドネシア、トンガ、インド、マレーシア、スリランカでした。今年の累積患者数は34人で、昨年同期の62人より少なくなっています。マラリアは2人で、カメルーンとエクアドルでの感染でした。チクングニア熱は2人で、いずれもインドネシアでの感染でした。
(3)その他の感染症:麻疹の輸入例は1人で、前月(9人)より減少しました。感染国はベトナムでした。エムポックスの輸入例は2人で、感染国はいずれもタイでした。
・渡航者医療センターからのお知らせ
・当センターの濱田篤郎客員教授がホームページ「感染症の地理学」を開設しました。感染症流行の本質を地理と文化で紹介しています。読み物的な内容もありますので、お気軽にご覧ください。https://geo-med.org/
・当センターの松永優子非常勤講師が日経リスクサイトから「駐在員のメンタルヘルス」の取材を受けました。この内容はホームページ「海外勤務と健康」に掲載してあります。https://www.bis-heal.org/

