海外医療通信2026年7月号 東京医科大学病院 渡航者医療センター 

海外感染症流行情報 2026年7月 

      

(1)全世界: インフルエンザとCOVID-19の流行状況

南半球の温帯は冬に入っており、オーストラリア、アルゼンチン、チリ、南アフリカなどでインフルエンザA型の患者数が増加しています(WHO Influenza 26-7-15)。アジアでもシンガポール、インド、スリランカで、A型の患者数の増加がみられます(WHO西太平洋 26-7-16、WHO南東アジア 26-7-15)。 

COVID-19については、7月に入り中国南部、台湾、日本で夏の流行が広がっています(中国CDC 26-7-16、台湾CDC 26-7-22、厚生労働省 26-7-24)。ウイルスの種類としては、中国や台湾ではNB.1.8.1型、日本ではBA3.2型が多く検出されており、今までと病原性に大きな変化はありません。 

(2)アジア:アジアでのデング熱流行状況

アジア各地で7月に入りデング熱の流行が発生しています(WHO西太平洋 26-7-23、WHO南東アジア 26-7-15)。今年はマレーシア、ベトナム、カンボジア、スリランカ、モルジブなどで、例年より患者数が多く、とくにスリランカではこの1ヶ月で患者数が2万人増加しました。アジアではこれから本格的な雨季になるため、デング熱の流行地域では蚊に刺されない対策をとってください。 

(3)アジア:タイでの狂犬病流行

タイのバンコク都市圏と南部のラヨーン県で、6月から7月にかけて狂犬病に感染したイヌが増加しており、保健当局は狂犬病への警戒を呼びかけています(ボストン大学 BEACON 26-7-6)。タイに滞在する際はイヌに近寄らないようにするとともに、イヌに咬まれた場合は直ちにワクチンの暴露後接種を受けるようにしましょう。 

(4)アフリカ:コンゴ民主共和国でのエボラ出血熱の流行

コンゴ民主共和国の北東部で発生しているエボラ出血熱の流行は、7月も拡大を続けています。7月23日までの患者数は2,905人で、1,269人が死亡しました(ヨーロッパCDC 26-7-24)。この1ヶ月で患者数は3倍近くに増えています。一方、隣国のウガンダでは7月に入り患者発生がみられなくなりました。

(5)北米:米国でサイクロスポーラの集団感染が発生

米国で5月からサイクロスポーラの感染者が多発しており、7月末までに患者数は1,900人以上にのぼっています(米国CDC 26-7-24)。患者の発生は全米9州に及び、とくに北部のミシガン州やオハイオ州で多くみられます。サイクロスポーラは消化管に寄生し下痢を起こす原虫で、飲食物から感染します。米国食品医薬品局によれば、今回の感染源はメキシコ産のレタスが疑われており、既に回収作業が進んでいます(米国FDA 26-7-24)。 

(6)北米:米国で麻疹患者が急増

米国では今年になり麻疹患者が全国的に多発し、7月24日時点で2,318人と昨年の累積年間患者数を超えました(米国CDC 26-7-24)。ここ1カ月間では、ペンシルバニア州やユタ州で発生が多くなっています。患者の7割は19歳以下の小児や学生で、流行拡大の原因には麻疹ワクチン接種率の低下があると考えられています。米国では9月から新学期に入るため、患者数はさらに増加する可能性があります。 

・日本国内での輸入感染症の発生状況(26年6月8日〜26年7月5日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立健康危機管理研究機構・感染症情報提供サイトの感染症発生動向調査 感染症発生動向調査週報ダウンロード2026年|国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイトを参考に作成しました。 

(1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢1人、腸管出血性大腸菌感染症42人、腸チフス2人、パラチフス2人、A型肝炎5人、赤痢アメーバ2人が報告されています。腸管出血性大腸菌感染症は前月の8人から大幅に増加しており、韓国での感染が31人と大多数でした。 

(2)節足動物が媒介する感染症:デング熱は7人報告され、感染国はマレーシア、スリランカが各2人でした。今年のデング熱累積患者数は41人で、昨年同期の71人より少なくなっています。マラリアは5人で、感染国はウガンダ2人、ナイジェリア1人、パキスタン1人、不明1人でした。 

(3)その他の感染症:麻疹の輸入例は4人で、インドネシア、バングラデッシュ、モンゴル、西欧での感染でした。エムポックスの輸入例は1人で、感染国は中国でした。コクシディオイデス症の輸入例が2人報告されており、いずれも米国での感染でした。本症は肺炎を起こす真菌疾患で、米国南部などが流行地域になっています。