自宅待機令中に深刻化,DVに対するこれまでの支援傾向について:Womankind 永尾香織氏
ドメスティック・バイオレンス、性犯罪、人身取引の被害者/サバイバー向けの支援を行っている団体、Womankind(旧New York Asian Women’s Center)に勤務しております、永尾香織と申します。コロナウィルスのコミュニティ拡散を抑止するための自宅待機令が出る中、世界中でドメスティックバイオレンスが深刻化している事実が日々ニュースをにぎわせています。NY市でも待機令が出てから6週目を迎えますが、私たち団体のこれまでの支援傾向についてシェアさせていただこうと思います。何かの形でお役に立つと幸いです。
*以下私たち団体の傾向が、市内あるいは全米にある同様の支援機関の傾向であるとは言えませんので、その点ご理解の上ご参照いただけたらと思います。
ヘルプライン
問い合わせ件数は横ばい。減少していない代わりに、現時点では著しく増加傾向にもない。時間差で今後増加傾向になることを予測している。
DVシェルター占有率
自宅待機令発令直後、親せきや友人の元へMove outした家族が5家族位(40床キャパシティなので、家族構成員数にもよるが、約25-35%程度)いたが、その後は安定している。シェルターの問い合わせ数に関してはパンデミック以前と同様のレベルをキープしているが、通常であれば1時間で済む入居スクリーニングのプロセスが一回の電話で終了しない為に数度の電話連絡を必要としたり(自宅待機ゆえに近くにAbusive Partnerがいる、子供の世話をする、など)、シェルターへの入居時間が深夜になるなど、通常時とは異なる対応を迫られている。また、スクリーニングを終えて入居が承認されたケースの中でも、Abusive partnerが常に自宅にいる為に家を出るタイミングを計れず、最終的に入居できなかったケースも出ている。それとは別に、私たちのシェルターへの入居資格はないものの、ルームメイトや大家に無理やり追い出された、との問い合わせが増加傾向にあり、パンデミックゆえに立ち退き命令が発行出来なくなっているにも関わらず、実際にはこのような状況が頻発していることを裏付けている。
NY市のDVシェルターは最大180日の滞在制限があるが、パンデミックを受けて現在その制限が解除され、最大日数を超えて延長滞在することが許されている。シェルターという密度の高い住環境である故、居住者には十分感染防止対策に関する情報を提供するほか、施設の掃除の頻度を増やして、対応をしている。また、通常2名体制である職員シフトを1名に減らし、この時期に自宅待機の選択ができずに継続出勤を余儀なくされているスタッフの負担軽減に努めている。
業務内容
3月16日よりシェルター運営を除き完全自宅勤務に移行したが、引き続き同行支援を除くすべての支援を継続している。
法的支援:
同行先として多かった裁判所への同行はNY市の家庭裁判所が現在はEssential case(新規で申請される以下のケース:緊急親権・養育費、保護命令、養育費違反)以外のケースを一時停止していることもあり、同行できないことの問題が最小限に抑えられている。Essentialケースに該当する問題への支援は引き続きWomankind内の弁護部門が対応している。
カウンセリング/ケースマネージメント:
Abusive partnerと別居しているクライアントととはこれまで通りカウンセリングを提供することができているが、現在もAbusive partnerと同居しているクライアントに対してはSafety planや支援内容を見直す必要が出ている。
Abusive partnerと同居しながら支援を受けていたようなケースでは、散歩や買い物と称してでかけた外出先から電話でカウンセリングを受ける、あるいは定職のあるクライアントの場合には職場から電話あるいは仕事買えりにWomankindのオフィスによってカウンセリングを受けることが一般的であった。しかしながら、パンデミックによる自宅待機令後は支援方法の変更を余技なくされ、一時的にメールでのやりとりに変更する、支援自体を保留する、あるいは一回一回のセッション時間を短くする代わりに頻度を増やすなどして、対応している。クライアント自身も、自宅で担う役割が変化・増加したこと、仕事からの収入が減少あるいは皆無になるなど、最低限のニーズを満たしたり維持する可能性が脅かされた結果、ドメスティックバイオレンスの問題に向き合うことが二の次(にならざるを得ない状況)になるケースも続出している。その結果、支援ニーズが減少傾向にあるほか、支援ニーズの多くはもっぱらケースマネージメント(ベネフィットの確保、リソースの共有、正確な情報提供、COVID19関連の新規ベネフィット各種への申請など)に集中している。
また子供へのカウンセリングに関しては、シェルター滞在者の子供へのカウンセリング以外は実質実現が困難な状況に置かれている。現在継続対応しているケースは、自分自身で安全なスペースの確保ができるティーンエージャーにとどまり、小さな子供への支援は中断せざるを得ない状況にあり、大きな課題となっている。
グループワーク:
サポートグループやTrauma informed yoga などのウェルネスグループ、ティーン向けのプログラムに関してはオンラインで引き続き行っている。
以上
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これまで通りとは言えませんが、できる限りの対応はしているつもりです。今後自宅待機が続く中で、枯渇するリソースへのストレス(これは支援側も同じ)や対人関係の問題などが増加すると考えられます。こういうときにこそ横の連携が役に立つ時だと考えています。私たちの団体で役にたてることがありましたらお気軽に直接ご連絡ください。よろしくお願いします。
Kaori Nagao
Manager, Manhattan Community Office
WOMANKIND
Formerly New York Asian Women’s Center
9 Mott Street, Suite 200
New York, NY 10013
T 212.732.0054 ext.134
24/7 H 1.888.888.7702