Part IV 自分を気遣うこと
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こうしたことが、あなたやあなたが支えようとする人々にとって圧倒的に肯定的で豊かな経験になることを望みます。ただ、同時にここで、あなたがそういう努力から過度の心理的影響やストレスを感じ悩まされていないかを確認したいと思います。そうなると「労働災害」ですね。
あなた自身のストレス
• 災害後の救援活動・作業に関わる就労者/ボランティア は自身の感情的健康状態に影響を与えるような,トラウマ的なストレスを受けることもある。つまり“バーンアウト”と呼ばれる現象である。
• 救援にたずさわった者には救援作業中だけでなく,救援作業後もストレスに関連する問題が生じるということが,観測され報告されている。
あなたは,あなたの国の被災地において救済支援を提供するという大変高潔な仕事をしているかもしれません。あなたは,長時間働き,過度に疲れて,人々の窮状やトラウマを身近に目撃し、人々への支援の限界に気づかされることもたびたびでしょう。これらのことは,あなたを過度のストレスに陥れ,バーンアウトと呼ばれる現象に引き込みます。このようなストレスをうまく扱ったり,自分自身の感情的健康と心身の機能への影響にも注意を払うことは、自分で責任を持って行わなければなりません。 これは,あなたの健康だけでなく,被災地の人々へのあなたの支援能力にも影響することなので大切です。支援活動をしながら気をつけなければならないのです・・・
“バーンアウト”
感情的にきつい状態に長期間関与することによって起こる身体的・感情的・精神的な極度の疲労状態
バーンアウトはこう説明されます。そしてまさにこれがあなたが避けたいことです。あなたが自身をケアしなければ, CSCとしての仕事はそれ自体がバーンアウトを導きます。あなたの日常的な仕事や家庭・社会においての役目に加えてCSCとして機能すること自体、このバーンアウトという現象をより起こしやすくします。Hurrell et al., 1998
津波との感情的関与
• 必ずしも場所によって特定されない
• “意味のコミュニティ”—ひとつの惨事の意味は徐々に広がり変化もしていくが、それを共有することでつながりを持つ個々人
• 津波に対する身体的な身近さ 対 感情的な身近さ
この仕事がなぜストレスをためやすいかという主な理由は,あなたにとっての津波のトラウマへの繋がりというのは,津波自体や日本に与えた物理的被害を直接見る必要がないからです。 つまり,感情的なトラウマは、身体的なトラウマとは異なり、トラウマ的出来事に実際にあったり,近くにいたりすることがなくても経験されうるのです。3月11日にあなた自身が津波をあっていようがいまいが,つまり津波との物理的に近い距離にいたとしてもいなくても,CSC(地域支援カウンセラー)として仕事をしていることによって,感情的な親近感を得たり深めたりすることでしょう。 その理由は,感情的なトラウマは,時空間を超えるものであり、CSCとして被災者から聞いた話や感情を通じてあなたに届くからです。このような伝達が,治療的な影響力に必要な要素であることはほぼ間違いがないのですが,あなた自身とあなたの感情的な健康にとっては危険因子にもなりうるのです。
なぜこれがあなたにとってストレスになるのか?
• 感情自体や非常に感情的揺り動かされることを扱っているから
• 生存者からのすさまじい苦悩に満ちた話を含め,災害を思い起こさせられることに頻繁に接触するため
• 被害者に対して十分なことができていないと感じるからーつまり,うまくいかないと不満に感じ無力感も覚えるから
では,なぜバーンアウトになりうるのでしょうか? 残念なことに,それにはたくさんの理由があります。一方,これらの理由を自覚することはあなたが自身をケアするのに役立ちます。繰り返しになりますが、これは直接にも間接にしろ,感情に焦点をあてた仕事であり,誰だとしてもエネルギーを吸い取られるものです。おそらく,これほどまでに長期間にわたりまた明らかな形でこのようなことに集中することには慣れていないことでしょう。それに加えて,あなたが忘れたいと望もうが,すでに忘れることができているとしても,勿論その仕事自体はトラウマを想起させるものとなります。同様に,メンタルヘルスの仕事は無形で,時としてその効果はわずかなものかもしれません。あなたは自分の専門領域の仕事においては,利益を得たり、企画が成功したりという、もっとはっきりとした具体的な実績に慣れていることでしょう。
なぜこれがあなたにとってストレスになるのか?
• 被災者への支援を最大限にするために,しばしば,あなたは自分の身体的・感情的な欲求を優先項目の下位においてしまうから。
• 折に触れて,あなたは被災者よりも食べ物や住まい,そのほかの資源により手に入れやすい状態にあることに罪悪感を感じてしまうから。
• あなたは被災者の怒りや、感謝の意が欠けているかのような態度にさらされるため。
自分のバランス感覚がおかされるような挑戦が続きます。このような津波に関連する仕事を通じて,あなたは自分自身のことより支援しようとしている人々の欲求を優先をしていることでしょう。まだだとすればこれからそうなるかもしれません。この傾向は抵抗しがたく,とてもよくあることです。理由の一つとして,出会う人々と比較して自分自身の生活や健康具合は良好であることに罪悪感を抱くからかもしれません。これはあなた自身の心や心配による産物でしょう。しかし,一方で,あなたは出会う人々の怒りや感謝のなさに直面するかもしれません。彼らはあなたに、傾聴し支援するよりももっと多くのことをしてほしいと望むかもしれません。例えば,彼らはあなたがお金や仕事,新しい家などへの近づくための手段を与えてくれると願っているかもしれません。彼らはあなたを理想化することもあり,そうなるとあなたと彼らの状態に落胆を抱くかもしれません。
警告サイン
• 判断や決断する能力が衰える
• 集中したり,すべきことの優先順位を付ける能力が衰える
• 徐々に能率が下がる
• 不安・抑うつ
• いらいら
• 自身の安全や身体的欲求の無視
• 睡眠困難状態
• 食欲不振
• 過度の疲労感
• 気力消失
• 酒・たばこ・麻薬の過剰摂取
• 同僚や上司への不信感
• 勤務先の組織や機関に対して,理解されていない,裏切られているように感じる
ここで,津波関連の仕事が,特にCSCやその他の仕事をする際に,あなたに過度に痛めつけるいくつかの警告サインを紹介します。(リストを読み上げる)
自助のためのヒント
• 自分の行っているボランティア行為に誇りを持つ。時にはそれに感謝しない人がいても,自分のしている仕事が重要であるということを認識する。
• 自分の仕事に対して,感情的な反応が出ることは予期できたことで,それも重要なことであるということを覚えておく。
• 自分に対しても他者に対しても、誇大な期待,完璧主義者的な期待は避ける。
• ボランティアのリーダーと自分の経験について話し合う。
• デブリーフィングのような集団活動に参加する。
• プログラムと関係ない人であなたが信頼している誰かと,あなたがどう感じているかについて話す。
• 自分に近い人がその出来事について言い・考えることに耳を傾ける。その出来事は彼らにも影響を与えていて,あなたに有用な見方をシェアしてくれるかもしれない。
• あなたが経験するかもしれないあらゆる緊張に注意を払い,常にリラックスできるように心がける。また,必要があれば1日に1~2度,10分から15分の深呼吸をする。
• 自分が楽しめること(たとえば,音楽を聴いたり,本を読んだり,ジョギングをしたり)をする時間を探すことを,普段よりも意識する。
• 自分の飲酒量を意識し,麻薬には手をつけない。
バーンアウト尺度
今,少し時間をとって回答してみてください。
質問紙に回答するために時間をとりましょう。この質問紙は,様々な種類の支援活動からくるその人のストレスレベルを明らかにしてくれます。これはあなた自身が知るためのものとなります。採点は____によってできます。
これは,あなたがこの仕事ができる状態かどうかを告げるものではありません。ただし,高得点の場合は,この仕事がどれだけあなたに影響を与えうるかに注意する必要があるかもしれません。この質問紙は,CSCとして働く間、ときおり繰り返すとよいでしょう。得点の上昇には留意し,それが何を意味するか考え,必要であればボランティアのリーダーにコンサルテーションしてもらいましょう。
[回答に5分とる]
事後テスト
これから事後テストに回答するために数分とります。覚えておられるでしょうが,CSCとして働くためにはこのテストを通過しなければなりません。
ですが私たちはあなたの熱心な参加具合や明白な能力と知識から,みなさんが合格すると信じています。私たちはあなたたちが必要なので,これは嬉しいことです。
[10分から15分まち,テストを回収する]
では,答えを見てみましょう
1. 心理的なトラウマとは:
a. 津波を目撃する
b. 津波に対して感情が高ぶる
c. 津波を直接目撃したときにのみ起きやすい
d. 普段対処できる能力を超えるストレス
e. 災害時には全ての人に起きるもの
答えは: D
2. 津波後の心理的反応として、特別な配慮を要さないもの:
a. 飲酒
b. 悲しみ
c. 他者からの引きこもり
d. 混乱
e. 身体的苦痛
答えは: B.
3. 津波後に起きる悲観の感情について正しいのは次のうちどれ?
a. 全ての人に起きるべきこと
b. トラウマから回復するのに必要
c. これは一般的で予期できる反応
d. カウンセリングが必要
e. 人は強くあるべきで,家族に見せるべきでない感情
答えは: C.
4. 災害への反応のあり方を決定する要因は:
a. 災害がどれだけひどかったか
b. その人の人としてのありかた
c. その人が受ける支援の量
d. 心理的な問題の既往歴
e. 上記全て
答えは: E.
5. グリーフカウンセリングが必要なのは一般的には:
a. 悲嘆が起きたとき
b. 悲嘆が長期間続く場合
c. 悲嘆が表出されずにいる場合
d. aからcの選択
e. bとcの選択
答えは: E.
6. 専門的なケアが必要な抑うつとは
a. 大うつ病と呼ばれるもの
b. ただ抑うつを感じていることだけでなく、ほかにいくつもの問題が生じる
c. 常に自殺願望と関連している
d. それほど一般的ではない
e. 上記のどれにも当てはまらない
7. 津波からの問題の解決の仕方について誰かをカウンセリングしている際にすべきことは
a. 助言を与える
b. 自分が彼らの立場ならどうするか伝える
c. 示された問題についての別の代理的な解決案を特定するために地域のメンバーを助ける
d. ストレスは無視して,先に進むように奨励する
e. 他の人に彼らを支援するようにしてもらう
答えは: C.
8. 飲酒についてカウンセリングをしているときすべきことは:
a. 飲酒による健康への影響を教育する
b. その人の飲酒行為へあなたが残念に思っていることを示す
c. 彼らが禁酒できるために協力する
d. 全ての酒類を撤去する
e. 飲酒問題から回復するための唯一の方法は,禁酒であるということを彼らに思い出させる。
答えは: A.
9. 子どもから回答が苦痛であったり難しい質問を尋ねられたとき、親やカウンセラーがすべきなのは:
a. 子どもを守るためにその質問には全く答えない
b. 正直にその質問に答える
c. 子どもに楽観的な回答をする
d. その質問は2度としないように子どもに言う
e. 子どもを守るためにうそをつく
答えは: B.
ご苦労さま!!