Part Ⅱ 津波の被害を受けた人々への心理的介入

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何故、介入するのか?

• 話をすることは「健康的」

• 励まし・力づけ

• 正常化(正常な反応であると気付かせる)・教育

• 社会的サポート

• 症状の軽減

5大心理的目標

• 慰安とサポート

• メンタルヘルスの促進

• 回復への加速化

• 心理的障害への発展防止

• 心理的障害への対処

急性期の後の段階

大半の人々は、生まれ持った対処メカニズムを使って対処する-地域の情報源を利用することが役立つ。

一部の生存者は、依然として(心理的障害ではないが)心理的症状に苦しみ、心理的ケアが必要となる。ケアの形式としては、感情面における応急処置やグリーフ・カウンセリング(不幸に対処するためのカウンセリング)といった特別な心理的介入となる。

その他、より深刻な精神疾患を経験している人々を特定する必要があり、より高レベルのケアが受けられるところへ紹介する。

すべきことvsしてはならないこと

すべきこと

• 積極的に被害者にアプローチする

• 注意深く話を聞く

• 同情を避け、共感する

• 被害者の尊厳を尊重する

• 問題に対する被害者の見解を受け入れ、十分理解する

• プライバシーや守秘義務の必要性を認識する

• 継続的なケアを保証する

してはいけないこと

• 助力やサポートを強要しない

• 被害者が感情を共有している時に、話を遮らない

• 被害者を哀れむような態度は取らない

• 批判的・断定的な態度は取らない

• 噂が広まることを黙認しない

• 病的な反応だと見なさない!

共感(Empathy)vs 同情(Sympathy)

共感(Empathy):

1. あなたが経験していることは理解できます。

2. 起こった災害に対して怒りを感じているのは理解できます。

3. あなたがとても怯えているのは当然のことだと思います。

4. 生存者が感情を表現したり泣いている間、ただ黙って横に座っている。

同情(Sympathy):

1. かわいそうに、この災害が起こったことは本当にひどいことですね。

2. この災害が起こったことは恐ろしいことですね。

3. 怯えないでください。どのような風にでもあなたを助けるために私はここにいます。

4. 本当に気の毒ですね。心配しないでください、全てが上手くいくようになります。

どのような人が助けを必要とするのか?

• 近づいた時に、ただ泣き始めたり、急に怒りの感情を爆発させる人

• 近づいた時に、会話することに躊躇いを見せる人

• 極端に取り乱したり、服装・髪などが乱れている人

• (家族メンバーの死去のような)重大な喪失を経験した人

• 助けを求めて近づいてくる人

全般的なアプローチ

災害の結果として心理的に苦しんでいる

地域社会のメンバーにどう話しかけるか?

注意深く話を聞く

• 被害者と話している時にアイ・コンタクトを築く

• 被害者が話すことは全て注意深く聞く

• 自分が注意深く聞いていることを示すために、ジェスチャーや言葉(「なるほど」)で反応する

• 出来る限り話を遮らない

全般的な健康について

• 危険から離れ、近親者と慣れた環境に留まる

• 物的な生活基盤を出来るだけ早く再構築し始める

• 考えられる政府支援や他の信頼できる支援は全て役立てる

• 確実で信憑性のある情報だけを聞く

• 出来るだけ早く日常の生活パターンに戻る

• 感情や経験を共有する-感情を抑え込もうとしない

• 慰安活動や復興援助活動に参加して他者の援助を試みる

• リラックスする時間を取り、瞑想・祈願・音楽といった満足感をもたらす活動に専念する

• 過剰のアルコールや鎮静剤を摂取しない

• 規則正しく食事をし、睡眠をよく取る

教育

• 他の人に心的外傷(トラウマ)の予想される心理的影響を伝える

• そのような助言は、生存者が自らの反応が「正常」であることを認識・納得する助けとなり、無力感や羞恥心を軽減する

• 反応に関する情報のみならず、生存者自身や彼らの近親者がその反応に対処するためにできることにも注目する

• 上記に関する配布物を準備することは往々にして役に立つ

感情表出:感情について話すこと

• 注意深く聞く

• 体験したことをより詳しく聞き出すために質問したり明確化したりする(ただし、決して強制したり押し付けがましく聞かない)

• 生存者が感じている苦痛・苦悩を理解し共有することを試みる

• 生存者に対して、自分は彼らと一体となっていること、つまり、彼らが経験したことを理解していること、を伝える

感情表出:慎重に試みる

• 生存者が本当に話したくないのであれば無理強いしない!

• 各々のペースに合わせて、感情を表出していくことを容認する!

より具体的なアプローチ

心理的応急処置

– 必需品を提供する

– 更なる危害から保護する

– 動揺・興奮を低下させる

– 著しく苦悩している人達をサポートする

– 家族が一緒で居られるようにし、社会的サポートを提供する

– 入手可能なサービスに関する知識を向上させる

話を反射させることによる傾聴

• 聞いていることを示すために(ジェスチャーとともに)短いフレーズを用い、話を中断させることを避ける

• 被害者の言葉・フレーズを繰り返すことで更に話をするように促す

• 内容を反射し、必要なときにはいつでも明確化する

• 相手が経験したことを聞いている際に自分自身の感情を反射させる

• 話の合間や終わりに内容を要約する

• 相手が経験したことを共有することにより共感していることを示す

• 相手を安心させる一方で、不誠実な口約束はしない

話を反射させることによる傾聴:適用根拠

• 自分のフレーズを言い返されることで、傾聴されており理解されていると感じるようになり、心的外傷(トラウマ)による孤立感が緩和させるため

• 共感を示すための様式化された方法であるため

• 正常化し教育することにより理解を促進させるため

• 明確化や要約は、極めて重要な意味を見出したり話をしたりすること促すのに役立つため

• 他の方法では出来事や経験を「消化」するのが困難であるものを統合させることを促すため

問題となりうる悲嘆

• 抑圧された悲嘆-無感覚であり感情を抑圧しすぎている

• 歪曲した悲嘆-悲しみよりも、怒りや敵意が圧倒している

• 過剰な罪悪感-度を越えて自己非難を繰り返したり罪悪感にとらわれる

• 慢性的な悲嘆-悲しみや喪失感が長期に渡り絶え間なく続く

• 臨床的うつ病

グリーフ・カウンセリング

• 不幸を経験した人に対して穏やかに力づけるような姿勢でアプローチする

• 家族や親友の全体的な状況について質問する

– 「家族や友達は、どのように影響を受けていますか?」

– 「どなたか親しい方を失くしましたか?」

– 「この不幸にどのように応対してきましたか?」

– 亡くなった人について話す

グリーフ・カウンセリング

• 亡くなった人について話す:

– 彼らの過去や人となりを思い出に刻む

– 彼らに関して生存者が思っていることを深く掘り下げる

– 彼らが亡くなって生存者が実務的に影響を受けていることを深く掘り下げる

– 感情的・社会的・実務的に、彼らが存在しない将来に対する計画を立てる

グリーフ・カウンセリング

• 「生存者としての罪悪感」について尋ね、家族を助けることが何故できなかったのかと考えることは人間としての正常な反応であると生存者を安心させる。

• 遺族が様々な追悼儀式をできるよう試みる。

• 亡くなった人と知己のあった他の生存者に会う機会を持てるようにする。

• 悲嘆のプロセスを容易にさせるために、公開追悼式を設けるといったグループ・アプローチを採り入れることもできる。

問題解決法

• 問題を特定する

• 既に持っている問題処理メカニズムを奨励し、自力本願を奨励する

• 地域社会メンバーが対策の代替案を特定できるように助力する

• それぞれの対策に関しての賛否両論を比較検討する

• 最も状況に即した対策案を特定し実行する